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東京新聞 2023年7月12日

【奏でる デイサービス 元警察官「行きたいと思える場所に」】

 ギターにドラム、ピアノや三味線-。埼玉県川越市の「KEION(ケイオン)」は多彩な楽器をそろえて演奏や歌、踊りを楽しむ異色のデイサービス(通所介護)だ。元警察官の上野拓さん(60)が「お年寄りが行きたいと思える楽しい場所を」と、二年前に開いた。民謡や演歌、懐かしの歌謡曲やポップスまで、今日も楽しげな音色や歌声が響く。


 七月初旬の午後、平均八十五歳の利用者が職員と一緒に歌や演奏を楽しんでいた。休憩を挟み約三時間、合唱では見事な和音を披露し、ドラムやギターを演奏する人も。炭坑節を歌いながら踊りの輪も広がった。マイクの前で朗々と歌った渡部洋子さん(90)は「ここに来るのが楽しみ」。川越音頭など盆踊りメドレーで鉦(かね)をたたいた山口庄一さん(82)は週一回の通所日は演歌などのハーモニカ伴奏も担当し、「音楽は健康にいいね」と笑顔を見せた。

 定員は二十人。利用者は川越市と隣接の同県川島町の在住者で、要介護度は平均2~3、認知症の人も多い。音楽が好きだからと別のデイサービスから移ってきた人もいる。

 最重度の要介護5だった八十代の女性は、歌が好きで週五回の通所を続けるうちに食欲が増して歩行も安定。寝たきりの時に作った胃ろうを閉鎖し今年は要介護2に改善した。ひざの痛みを抱える八十代の独居女性は、死ぬことばかり考えて引きこもっていた時に勧められて見学。三味線の名取で「こんな場所があるならもう少し生きてみたい」と通い、七月下旬に地元の盆踊り大会で仲間と東京音頭などの生演奏に挑戦する。


 看護師・介護福祉士の遠藤肇さん(43)によると、歌唱や楽器の演奏は認知症の人が情緒面で落ち着くなどの効果が見られるという。「本人の意向や得意なものを聞いて伸ばしていく。それが利用者の『楽しい』という感覚につながる」とやりがいを話す。民間資格の音楽療法士を取得して働く介護職の橋本篤さん(40)は「音楽は言葉を使わないコミュニケーション。集中力を高め気分を向上させ、会話が増える」と効果を語る。


 上野さんは約四十年間勤めた埼玉県警で、主に鑑識の仕事をした。扱った高齢者の孤独死は五百件以上。たとえ独りでも夢中で打ち込める何かや社会とのつながりがあったなら-。そんな思いが高まり、五十八歳で早期退職し、介護の世界へ転身した。

 レストランだった天井の高い物件を借りて防音仕様に改装。レコーディングの部屋やバーカウンターもあり、デイサービスとは思えない装いだ。上野さんが所有するギターやアンプ、ミキサーに加え、電子ドラムを購入。知人もピアノやキーボードを寄贈してくれた。中学時代からギター好きで、県警で軽音楽クラブをつくった経験も生きた。  「幸せとは夢中になれること。目標は、老け込んでいる暇がないデイサービスです」


https://www.tokyo-np.co.jp/article/262503


週刊ポスト 2022年4月15日

「安定」の世界から「やりがい」の世界へ 公務員から「起業」に踏み出した人たち

 「定年後はどこでどうやって働くのか」という問題に直面するのは、サラリーマンだけでなく公務員も同じ。安定の象徴とも言える公務員の立場から、60歳を境に起業というチャレンジに踏み出し、充実した日々を送っている人がいる。

 埼玉県警の警察官だった上野拓さんもその一人だ。58歳で退職した後、会社を起業し、埼玉県川越市にデイサービス施設「KEION」を開設した。

 警察官も定年を迎えると、再任用や別の職種での再雇用がある。ほかにも、防犯協会などの公益法人や、損保や生保など民間企業に再就職する道もある。なぜ定年まで勤めて、安定したルートを選ばなかったのか。

 「警察官の場合、定年の60歳まで勤めると、退職金が減らされる制度になっています。退職金も大事な運営資金になりますし、60歳を超えてから新しいことを始めようとしても、体力的にも精神的にもつらいだろうなと思ったんですね」

 警察官を辞めて上野さんが始めたのは、防音室完備で、楽器演奏ができることをウリにしたデイサービス。部屋の入り口横にはピアノ、奥にはドラムやギター、マイクスタンドが置かれている。利用者は午前9時半から午後4時半まで、昼食やおやつをとりながら、楽器を演奏したり歌ったりして時間を過ごしている。施設の内装は、大部分を自分で手がけたかったので、まだ体力があるうちに始めたかったのも退職の理由の一つだという。

 上野さんはなぜ介護業界に挑戦しようと考えたのか。

「約40年間の警察人生で500件を超える孤独死の現場を見てきました。そのほとんどが悲惨な現場で、“なぜこんなことになるんだろう”という気持ちを抱いていたんです。そのなかで、熱中して打ち込めることや社会との関わりがあれば、たとえ一人になったとしても幸福と感じて人生を全うできるのではないかと考えるようになったんです」

 上野さんは警察時代にバンド活動をしていたこともあり、最初はシニア向けのライブハウス経営も考えたというが、「ビルを持っているくらいでないと経営が成り立たない」と断念した。そこで思いついたのが、音楽とデイサービスの融合だったという。

「妻が訪問看護の仕事をしていたこともあって多少のノウハウがありました。楽器を演奏することで足や指を動かすし、脳も使います。料金は国が介護保険で9割負担してくれるし、団塊の世代はビートルズ世代だから、楽器に興味がある人は絶対いる。川越市には対象の高齢者が9万5000人いるから、その0.1%でいい。95人が通ってくれれば事業として成り立つと考えました」

 物件探しを始めて、20年秋に現在の施設を契約した。ただ、介護保険に対応したデイサービスを始めるには、看護師(原文:看護士)が常駐している必要がある。内装工事を始めながらSNSで募集したところ、大学の看護学科の教員で三味線の達人が雇ってくれとやってきた。

「以前から、福祉に三味線を取り入れたいと考えていたと。名取と言うだけあって、うまいのなんの。工事の職人さんも、こんなところで津軽三味線を生で聴けるなんてと大喜びしていた。彼もやりがいを感じたのか、翌日には『職場に辞めると伝えた』と言うんです。妻子持ちなんだから、よく考えたほうがいいよって言ったんだけどね」

 21年7月にオープンし、11月までは利用者は倍々に増えた。しかし、コロナの第6波の影響で、今年1月から急減し、現在の契約者は平均して20人弱。経営は安泰ではない。

「お金はあるに越したことはないけど、幸せっていうのは、何か熱中できるものを持っているっていうことでしょ。それが社会貢献や人のためになるなら、なおさら幸福感は高まると思うんです」

 音楽デイサービスは第1弾で、夢をかなえるデイサービスの構想はまだまだあるという。

毎日新聞 2022年1月27日

音楽で老後に生きがいを 元警察官がユニークなデイサービス施設運営

 川越市福田の「音楽介護予防施設 KEION(けいおん)」は、楽器屋スタジオを備えるユニークな高齢者向けデイサービス施設だ。運営するのは元県警警察官の上野拓さん(59)。多くの高齢者の孤独死の現場に立ち会ってきた経験から「音楽を通じて、老後の生きがいを感じてほしい」と、警察官を早期退職して施設を立ち上げた。

                       【成澤隼人】


 天井が高く、広々とした施設は一見ライブハウスのような外観で、以前レストランだった建物を改装した。室内にはギターやウクレレ、ピアノ、ドラムセットといった楽器がずらりと並ぶ。利用者は楽器を演奏したり、歌を歌ったりしながら和気あいあいと談笑していた。

 ギター三味線の演奏に合わせたラジオ体操など、ユニークなプログラムもあり、利用者の同市の男性(79)は「スタッフも利用者もみんないい人で、楽しく過ごしている。演奏を聴くのが好きなので、私の性に合っていた」と笑顔で話した。

 上野さんは高校を卒業し、1981年に県警の警察官になった。長年警察署の鑑識係として勤務し、多くの凶悪事件や変死事案の捜査に携わった。中でも多かったのは、高齢者の孤独死だった。身寄りがおらず、一人で亡くなった人たちの生活ぶりを知ったことで、「幸せな生き方とは何だろう」と考えるようになったという。

 小さい頃から大の音楽好きだった上野さん。中学生の時にギターを弾き始め、警察官時代には県警内に軽音楽サークルを立ち上げ、バンド活動を続けてきた。「音楽とデイサービスを組み合わせれば、楽しみながら老化予防につなげられるのではないか」。自身の定年が近づく中、少しずつ施設の構想を膨らませていった。

 意を決し、20年秋に県警を退職した。家族の後押しも受けながら、開設資金の準備や施設の運営会社の設立に奔走し、21年7月、オープンにこぎつけた。上野さんは「何か夢中になれることがあることが一番の幸せ。家族に連れられてではなく、利用者自ら毎日来たいと思ってもらえる施設を目指したい」と話す。

 利用者は川越市、川島町の住民を中心に募集している。施設の見学も受け付けており、問い合わせは(049・298・6923)。


元記事

https://mainichi.jp/articles/20220127/ddl/k11/100/137000c

産経新聞 2022年1月3日

音楽を高齢者の生きがいに

地域で輝く

人口減少や地域産業の振興など全国各地がさまざまな課題を抱える中、文化の発信や魅力あるまちづくりなど、独自の創意工夫や地道な取り組みで地域に活力を生み出し、成果を挙げている人たちがいる。地域で輝き、令和4年もさらなる活躍を目指す「時の人」を紹介する。


埼玉

 スタジオや楽器を備えた埼玉県川越市のデイサービス施設「音楽介護予防施設KEION(けいおん)」を運営する。音楽活動に取り組む場を提供することで老化や認知機能低下の予防を図るという全国的にも珍しいタイプの施設だ。

 令和2年10月まで埼玉県警で勤務し、3年7月に施設を開いた。県警で約15年間にわたり鑑識活動を担当し、多くの孤独死の現場に立ち会った経験から、高齢者の幸せな暮らしをサポートしようと考えた。

 検死した遺体は1千体以上で、このうち6割以上は孤独死した高齢者だったという。遺体が腐敗した正視に耐えない現場も少なくない。

「死」と向き合いながら自問を繰り返した。

 「独りになるというのはこういうことなのか…。幸せって何だろう」

 たどり着いた答えは「熱中できるものがあれば幸せになれる」。自身は中学時代にギターを始め、県警内に軽音楽サークルを作ったという音楽好きだ。音楽を通してお年寄りが生きがいを見いだし、老化予防にもつながる施設は作れないかー。そう考えて、県警在職中から構想を温めてきた。

 防音のスタジオとギター、ピアノなどがそろった施設では、利用者たちが楽器の演奏や歌唱、作曲などに取り組み、歌や演奏はCDにして配布している。歌合戦など施設内でのイベントも盛りだくさんだ。身体機能向上のための体操は、演奏に合わせて体を動かす方式を採用している。

 現状の利用者は18人で、目標の半分。それでも「今は赤字だが、まずは『楽しいと思えるデイサービス』を作っていきたい」と力を込めた。

(深津響、写真も)

高齢者住宅新聞 2021年9月22日(水)

【ギター・ドラムで本格演奏 元警官、デイ開設】

 音楽活動ができるデイサービス「KEION(けいおん)」(埼玉県川越市)が7月1日、オープンした。

  ギター、ピアノ、ドラムなど多岐にわたる楽器を揃え、防音スタジオを完備。利用者が主体的に音楽を楽しみながら認知症予防、身体機能の維持・向上ができるデイを目指している。

 開設者であるOPENUP(同)の上野拓社長は元警察官。検視を担当していたという。「高齢者が孤独死する現場を多く見てきた。高齢で1人になっても、いきいきできる場をつくりたかった」と開設の経緯を話す。県警内の仲間と軽音楽部を結成するほど音楽好きであったため、「利用者が主体的に音楽活動をできるデイ」をコンセプトとした。

 施設は定員20人の1日型デイ。以前はレストランとして使われていた建物は、面積約230平米、天井高5m以上と開放的な空間となっている。

 施設奥には防音スタジオを設置した。10種類以上の楽器や音響機器を揃え、周囲への音漏れを気にせず演奏や歌唱、レコーディングが可能。ほかにもCD・DVD作成やラジオ番組作り、YouTube配信などもできる。

 午前中は、その日の演奏内容や担当などの打ち合わせや準備。午後には練習や録音、楽曲制作を行う。地域住民に向けたコンサートも予定しており、照明や衣装の準備なども、利用者と一体になって進めていく。「利用者は、やらされ感のあるレクリエーションは望まない。誰かに聴いてもらう、発信する機会をつくることで、利用者の主体性を引き出したい」と上野社長。

 楽器の音に合わせたリズム体操などの機能訓練、発声や表情筋トレーニングなどの口腔機能訓練も実施する。

 「音楽好きな人も、今まで演奏をしたことがないという人も楽しめる場にしていきたい」(上野社長)。

朝日新聞 2021年9月9日(木)

【老後の幸せを感じる場に】 [音楽介護予防施設を開設した元警察官 上野拓さん(59)に聞く]

 川越市のデイサービス「音楽介護予防施設KEION」ではギターなど様々な楽器の音が流れ、利用者も笑顔で奏でる。音楽の力で老化や認知機能低下の予防を図ろうと、県警の警察官だった上野拓さん(59)が7月に施設を開いた。警察での経験も生かし、「利用者が毎日来たくなる施設」を目指す。

 —鑑識の担当が長かったと聞きました
 高校を卒業後、1981年に警察官になりました。昨年の秋に早期退職するまで、大宮西署や狭山署で鑑識係として勤務しました。約40年のうち半数以上の時間は鑑識に携わっていたと思います。最初は知識もなく大変なことが多かったですが、カメラの扱い方から学んで、科学の知識も努力して学んでいきました。

 —デイサービスを開設しようと思った理由は
 捜査の中で、多くの高齢者の孤独死の現場に立ち会ったことです。孤独死以外も含め、ご遺体は1千人くらい見てきたと思います。そのような経験を経て、老後の幸せについて考えるようになりました。何かに夢中になれたり、地域のコミュニティーに関わったりすることができたら、たとえ1人になったとしても幸福を感じることができるのではないかと思いました。

 —なぜ施設に音楽の要素を採り入れたのですか
 自分自身、音楽が大好きだったんです。中学生の頃にギターを始めて、だんだんロックの世界に引き込まれていきました。音楽は年代を越えて楽しめます。楽器を弾くことはできなくても、聴くのが好きな人もいる。音楽の力で夢中になれることを作り出し、老化や認知機能の低下の予防につながればと思いました。

 —施設の雰囲気はどうですか
 利用者の方々は、いきいきした笑顔を見せてくれることが多いです。防音のスタジオも設置しているので、ギターやピアノ、ドラムまで本格的に演奏できます。太鼓をたたいてリズムをとるだけでも音楽を楽しむことはできます。歌を歌ったり、ダンスをしたりして、楽しみながら体のトレーニングもしています。

    —警察官として働いた経験が生きていると思うことはありますか
 人との付き合い方が生かされていると思います。例えば、被疑者の取り調べを行う際も、「この刑事には話したくない」と思わせてしまったらだめなんです。うそや上辺だけの話をしないことで、その人の人柄はきちんと伝わると思います。今は「毎日を楽しもうよ」という自分の気持ちが利用者の方々にも伝わっているのかなと思います。

 —目指す施設像はありますか
 警察官時代に、捜査の一環で高齢者施設やデイサービスを訪れることがあり、利用者が「行きたくない」と送りに来た家族とけんかをしている姿を何回か見ました。家族に無理やり連れてこられるのではなく、利用者が自ら「毎日来たい」と思ってくれるような施設にしたいです。そして、利用者が第一であることを決して忘れないようにしたいですね。

 —今後の目標を教えてください
 うちのような施設がもっと増えて、音楽を学んだ人たちが働ける福祉の現場が増えてくれればうれしいです。音楽によって認知機能の低下や老化予防ができるという証拠が積み重なって、音楽療法が全国的に広がってほしいと願っています。
(聞き手・森下友貴)

産経新聞 2021年8月25日(水)

【老化予防に「音楽の力」】 [川越にスタジオと楽器備えた介護施設]

 スタジオや楽器を備えたユニークなデイサービス施設「音楽介護予防施設KEION(けいおん)」が川越市にオープンした。音楽活動に取り組む場を施設利用者に提供することで、老化や認知機能低下の予防を図る。(深津響、写真も)

 施設は、川越市と川島町に住む要介護1~5の人と、川越市の要支援1、2の人が利用できる。

 防音のスタジオとギター4台、ピアノとドラムセット各1台などがそろっており、利用者たちは楽器の演奏や歌唱、作曲など、思い思いの活動に取り組んでいる。歌や演奏はレコーディングした上でCDにして利用者に配布しているほか、動画投稿サイト「ユーチューブ」でも公開している。

 利用者の大嶋弘道さん(81)は「歌が好きなので上手に歌えると楽しい」。渡邉鏡子さん(89)も「いきいきできる」。施設では、身体機能向上のための体操の際も職員の演奏に合わせ体を動かす方式を採用するなど、音楽を活動の軸に据えている。

 施設の運営会社の社長、上野拓さん(58)は、県警で鑑識活動を担当してきた経歴を持つ。多くの孤独死の現場に立ち会った経験から、高齢者の幸せな暮らしをサポートしようとデイサービス施設の設立を計画した。  既存の施設のサービス内容を調べる中で「音楽を生かした施設があれば」と思い立ち、7月1日に開所にこぎつけた。

 上野さん自身、中学時代にギターを始め、県警内に軽音楽サークルを作ったという音楽好きだ。「楽しむことが第一。熱中して音楽を楽しむことが老化の予防にもつながれば」と期待を込めた。


元記事

https://www.sankei.com/article/20210824-ACNMVPLMC5JWNATOLD7E7TYPGQ/

読売新聞 2021年7月1日(木)

【高齢者 音楽で生き生き】 [元警部・上野さん 川越にデイサービス施設]

 音楽に触れることで、高齢者がいつまでも楽しく人生を送る—。そんな理念に基づくデイサービス施設「KEION(ケイオン)」が7月1日、川越市で開業する。創設者は県警の元警部、上野拓さん(58)。約40年の警察人生の中で、高齢者が孤独死した現場にも多く立ち会ってきた。「年をとり、一人になっても夢中になれることを見つけ、幸せに過ごしてほしい」。警察を早期に退職し、そんな思いを実現した。  KEIONは、カフェかと見まごう、おしゃれな外観。もともとレストランだった建物を改装したという。入り口の横にはピアノがあり、奥はドラムやギター、マイクスタンドなどが置かれた防音仕様のスタジオになっている。利用者は午前9時半から午後4時半まで、昼食やおやつをとりながら、楽器を演奏したり、歌ったりして時間を過ごすという。

 上野さんは高校卒業後、1981年に警察官になった。大宮西署や狭山署などで鑑識係を務める間に500件を超える孤独死の現場に立ち会った。その中で「熱中して打ち込めることや社会との関わりがあれば、たとえ一人になっても、幸福と感じて人生を全うできるのではないか」と考えるようになった。

 上野さんにとって、それは音楽だった。県警内で軽音楽クラブを創設したほど音楽好きだ。「楽器を演奏することで足や指を動かせる。作曲は脳トレーニングにもつながる」。定年を待たず、昨年10月に県警を退職すると、デイサービスの運営会社をつくり、「音楽介護予防施設」の開業に向けて動き出した。  上野さんは「そう遠くないうちに、地域の人を招いて施設利用者の演奏を披露したい。要介護者でも生き生きと過ごせることを、たくさんの人に知ってもらいたい」と話している。

 施設利用者は川越市と川島町居住者を中心に受け付ける。問い合わせはKEION(049・298・6923)へ。